リンゴとラノベとマンガの森

主にライトノベルとマンガの感想を書いていくブログ。最終更新:9月17日(火)。次回の更新は9月21日(土)予定。

極主夫道❶

漫画:おおのこうすけ

刊行レーベル:BUNCH COMICS

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「もう一度聞くけど……職業は?」

専業主夫です」

 

 大人気アットホーム任侠コメディ、はじまりの第1巻。

 

 伝説のヤクザ不死身の龍

 そんな彼が足を洗い始めたのは……なんと専業主夫!!

 キャラ弁作って写メしたり、お料理教室でチーズコロッケを作ったり、バーゲンセールに必死になったりと、見た目は怖いが中身は完全に主夫な龍

 そんな龍の日常を描いた、コメディマンガ

 

 とても面白かったです! お弁当作ったり近所の子供のためにお菓子焼いたり明るい日常に染まりきっているのかと思えば、やはりまだヤクザだった頃のくせ(?)は染みついているらしく、嫁さんの誕生日パーティーがヤクザ式だったりプレゼントが元々持っているやつだとわかった瞬間エンコ詰めようとしたり……。

 作者は極主夫道が初の連載マンガとのことですが、マジで……?

 クオリティ高い……高くない……?

 いいシュールギャグマンガだと思いました。

 

 

 

以下ネタバレありなので注意

 

 

 

 一晩に単身丸腰で抗争相手の事務所を10ヶ所潰したと言われている伝説のヤクザ・不死身の龍。しかし彼はある日忽然と裏社会から姿を消したかと思ったら、なんと専業主夫になっていた!

 もうこの設定だけで笑えるからずるいよね。普段気だるげにしてる奴が実は最強、とか、めっちゃくちゃ強面な奴が実は女子力高いとか、人ってギャップに惹かれやすいものなんですが(ギャップ萌えという言葉があるぐらいだし)、そのギャップの強さというか大きさというかを、フルに活かして描いていたように感じます。

 極主夫道の場合だと、強面でヤクザっぽい奴が実は専業主夫、という感じのギャップがありますよね。これがもうシンプルに強くて面白い。

 初連載作品とは思えないくらいしっかり笑いどころがあってすごい。

 これは人気が出るのも頷けますね。読むのがあっという間でした。

 

 ただギャップと言っても、完全に主夫なわけではありません。

 例えば第1話、朝早く起きて妻のためにキャラ弁を作るシーン。

 ここで使っているのをよく見ると、普通の包丁じゃなくてドスなんですね。

 ……包丁、買えよ(と思ったら次話で包丁売りが来てたの笑った)。

 そしてそのドスで作った可愛らしいキャラ弁を妻が忘れていき、それに気づいた龍が弁当を持って家を出るんですが、弁当をアタッシュケースに入れて持っていくんですよね。どう見てもカタギの運び方ではないでしょ(笑)

 

 そして行動のほかにも、言葉遣いにもヤクザの名残はあって、

 例えば第9話。小麦粉などのコーナーの場所を聞きたいだけなのに「白い粉の棚ってどこですかねぇ」。いや、白い粉であることに間違いはないんだけど……!

 その顔で言われたら完全に別のものが思い浮かんじゃう……!(笑)

 思わず店員さんも「ないです」と即答。そらそうよ。

 嫁さんがフォローしてくれたから助かったけどマジで龍さん普段どうやって買い物してんの……? ちゃんとできてんの……? と不安になる。

 一般人にも嫁さんと言い合いしてるだけで怖がられるし、龍さん婦人会の人やお料理教室の人が優しい人でよかったけど生きづらそうだなあ。

 でも「暴力で大切なものは守れない」というのはその通りだと思うし、これからも気にせずにカタギの世界で幸せに生きてほしいと思います。

 ……話が逸れましたが、このように、怖そうな面引っさげているのに主夫らしさ全開のムーブをしていてそこをシュールに思って笑ってしまう場面もあれば、普段は主夫として行動しているのにボロが出ちゃったりして笑ってしまう場面もあったりと、シュールギャグという点は一貫していてもそこからさらに笑いの種類があることが魅力的に感じるのかなあ、と思ったり思わなかったり。

 

 また、そんな龍のことを引き立てる個性豊かな脇役キャラにも注目!

 嫁さんは普通の人なのかな? どうやって知り合ったのか気になりますが……。

 一般的な感性の持ち主なので一応龍に対してツッコんでくれるツッコミキャラ

 特に誕生日祝いの際のサイレントツッコミには笑いました(笑) 

 コーラ入れようとして龍に戻されたり、欲しいもの買ってもらえないからって龍のことひげやグラサン呼ばわりしたり、可愛くて面白いいい嫁さんだ。なんか普通の庶民的な可愛さがあるというか……龍さんが守りたくなる気持ちもわかりますね。

 

 は龍の元・舎弟なのかな? 2巻の内容に少し触れることになりますが、雅は龍の言動にはツッコんだりはせず、むしろ「主夫とヤクザは表裏一体……!」「これが兄貴の極主夫道……!」と感服しながら乗っかるキャラなので、嫁さん(一応ミクさんというちゃんとした名前があります)とはまた違う役割を持ったキャラです。

 1巻の時点では調子のいいチンピラという印象であまりいいイメージは抱いていなかったのですが、2巻の方で好きになりましたね。まあその話はまた後に。

 

 またモブキャラも龍の言動を引き立たせていたと思います。特にポリキュアグッズを買いにきたときの店員がすごい濃かった。めっちゃ早口で喋ってそう。

 全く同じ表情で「カハッ」言うのはズルすぎるでしょう?

 

 シュールギャグ満載の非常に優秀なコメディマンガ。

 あちこちに笑いどころがあって終始ニヤニヤしてました。

 2巻も既に読み終えているので、また後日感想を上げたいと思います。

アクタージュ vol.8『邂逅』

原作:マツキタツヤ 作画:宇佐崎しろ

刊行レーベル:ジャンプコミックス

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「ねぇ 夜凪さんは興味ない?

私とあなた どっちの芝居が上か」

 

 シリーズ累計170万部突破の大人気ジャンプマンガ

 

 新宿駅を舞台に黒山墨字が(無許可で)撮影したとあるバンドのMVがきっかけで、天才女優・夜凪景知名度はより確実なものになっていた。

 一方その頃、貼り付いた笑みを浮かべる底の知れぬ男・天知心一の手によって、感情を引き出された明神阿良也、そして『天使』百城千世子

 この3人に、ハリウッドでも活躍する俳優である王賀美陸を加えて、天知は舞台羅刹女を計画。ひとつの役にふたりの俳優をあて、客に見比べてもらう、明確に勝敗が見えるダブルキャストとなるこの舞台に巻き込まれた彼らは、内なる闘争心に火をつけ始めるのだった。

 少女少年の役者物語、ダブルキャスト編突入の第8巻

 

 本誌既読。いやー、この巻の密度すごいですねえ。

 MVから花子さんとの話まで丸々入ってるんですよね。

 ……この8巻、よく考えたら非常識(無許可新宿駅MV撮影)に始まって非常識(トーシロ女子高生制服登山)で終わっている

 第8巻、恐ろしい子……!

 まあそれはともかく、最推し百城千世子が悔しさを顕にして波乱の道へと進んだり、自ら天使の羽根をもいでメソッド演技を得たり活躍している様子はやはり最高だなと。ここからもっと大変なことになりますけどねウェッヘッヘ……。単行本派の百城千世子推しが発狂するのが楽しみだぜ。

 

 あと改めて読むと天知さんが黒幕すぎて笑った。

 

 

 

以下ネタバレありなので注意

 

 

 

 おまけで謝ってしまえば何してもいいという風潮がマツキ先生の中にあるような気がするのは気のせいですかね。

 新宿駅無許可撮影、多分現実世界だったら死ぬほどぶっ叩かれてるな……。

 でも黒山さんと夜凪ふたりでの撮影は非常によかった。このふたりの出会いから全てが始まったわけですし、やっぱり知名度が確実なものになるときもこのふたりでの仕事でがいいとは思ってたんですよ。デスアイランド銀河鉄道の夜隣の席の君と黒山さんがあまり関わってこない話で知名度が上がっていったので、それはないかなあ、と思っていたのですが……。

 いやあやっぱりこのふたりですね。

 いい意味で1巻の感じがちょっと戻ってるように思えました。

 

 夜凪が今の自分を活かして順調に知名度を上げていく一方、千世子と阿良也は背景は違えどどちらも今の自分を変えるために天知に付きます

 

 阿良也が真っ当に人間してる……。夜凪への執着心は相変わらずアレだけど。

 巌さん亡き後の天球がどうなるのか気になってたんですが、やはり阿良也が引っ張っていくことになったんですね。そしてそのためには、巌さんのような、名前が出るだけで大衆が興味を持つようなブランド力が必要だと。そのために天知に付くと。

 ひとりのちゃんとした人間ムーブしてる……。

 

 そして千世子。アリサさんによると彼女のピークは今で、賞味期限までは2年もないそうです。彼女は天使と呼ばれているが実際に天使であるわけではないわけで、彼女だって年月が経過すれば老いるし、同時にファンも老いる。彼女とファンの間にハマっている需要と供給という名のふたつの歯車はこれから少しずつズレ始めて、最終的には音も立てずに外れてしまう。

 現実でもよくあることです。ピークが過ぎた女優はだんだんとテレビから姿を消し、代わりに新たな女優が幅をきかせ始める

 よくあることで、私達はよほど熱狂的なファンでもない限りそれを当たり前のことのように受け入れますが、千世子達女優にとってはやはりそれは悔しいことなのです。当たり前のことですが。

 そして千世子はそんな状況を回避するため、夜凪の上を生き続けるために、天知という名の悪魔と契約するわけです。

 

 天知さん、目の前で悪魔認定されちゃった……。まあ実際悪魔というかそれすら通り越してもはや名称不明の不気味な知的生命体なので多少はね?

 でも確かに悪魔との契約ですよねこれは。彼に付いたからといって、必ず状況が変わる訳ではない。自分は一瞬満足できるかもしれないけど、長い目で見たら自分が満足するだけで状況自体はむしろ悪化する可能性の方も高いわけで。

 それでも彼女に今回の行動を決意させたのは、やはり夜凪という存在の彼女の中での大きさが関係しているのでしょう。千世子も夜凪のMVを見て、それを通して夜凪の様子を見て「悔しかった」と言っていますし。夜凪より上にい続けるためにも、というようなことを言っていますし。

 読み合わせの際、メソッド演技も用いましたしね。これは夜凪に影響されている。それがいいのか悪いのかはわかりませんが。

 卵を吐き出す天使、最高でした(にっこり)。

 でもアリサさんの胃は痛そう。この人悪役かと思ってたらここんとこタダのいい人だな……。黒山もあんまり喜んでる様子ではないですし、これからどうなるのか。

 ……いやまあ本誌読んでるので今千世子がどうなってるのかは知ってるんですけどね? とりあえずヤバいとだけ言っときます。

 

 そして今回の目玉新キャラ、王賀美陸山野上花子

 花子さんと夜凪のことについては次巻の内容も含めて話したいので今回はしないとして、王賀美ですね。

 彼の演技はわかりやすく例えるならば『キムタク』です。

 元SMAPのメンバー、木村拓哉。彼は数々の映像作品に出演し、出演した作品を片っ端から有名にしていきました。とんでもねえ視聴率男です。

 しかしそんな彼には、昔から言われている言葉があります。

 それは「何を演じてもキムタク」です。

 どの作品の彼も、良くも悪くも実際の彼と変わらない。

 なにを演じようとしても人には彼が『キムタク』にしか見えない。

 顔、仕草、呼吸……。彼の何がそうさせているのかはわからないが、前に立たれるだけで『役に』の前にまず『キムタクに』呑み込まれそうになる

 それほど、人ではなく荘厳な背景のように立ちはだかり、名を変えず背景として他の演者を呑み込まんとする

 それがキムタクの演技であり、王賀美の演技です。

 俺はキムタクの主演作品が好きでよく見ているので、王賀美のキャラや演技も結構好きだったりします。前髪3本は切りたくて切りたくてたまりませんが。

 花束持って現れるところとか変わり者っぽくて意外と紳士だなあ。

 

 そんな4人が主演となる舞台羅刹女

 最遊記に登場する孫悟空の敵・羅刹女を描いた架空の物語です。

 銀河鉄道の夜と比べるとあまりピンと来ないかとしれませんが、個人的には本番を見るのがすごく楽しみだったりします。

 最推し百城千世子が勝ちそうな雰囲気を漂わせていますしね!

 ダブルキャスト編、武光くんや和歌月ちゃんなど懐かしのキャラもたくさん集まってきて、とても読んでて楽しいです。

 続きも楽しみに待ちたいと思います。

全肯定奴隷少女:1回10分1000リン

文:佐藤真登 イラスト:凪白みと

刊行レーベル:MF文庫J

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「奴隷少女はあなたのお悩みを全肯定するの!!!!! さあ!! 日々のお悩みを叫ぶといいのよ!!!! えへ!」

 

 昨日に続いて佐藤真登先生の作品。

 

 公園で見かけた、ボロボロの服を着た少女。

 手に持つ看板に書かれているのは『全肯定奴隷少女:1回10分1000リン』の文字。

 10分間ハイテンションでお悩みを全肯定してくれる通称・奴隷少女ちゃんの元には、今日も今日とて個性的な人達が集まってきて……?

 たった10分で人生は変わる! ハイテンションメンタルケアファンタジー!!

 

一時期Twitterで流行った『全肯定ハム太郎をパロった今作。「へけ!」の部分が「えへ!」になっているんですねー。……冷静に考えたら「へけ!」ってなんだよという感じですが。

 それはともかく、SNSネタものは出オチになりやすくあとに続かないんですが、この作品は最初から最後まで勢いよく駆け抜けていくことができました。また、根底の部分が前述の通りパロディですが、そのネタを知らない人でも楽しく読めるように、ひとつの作品として成立するように構成されており、とても面白かったです。佐藤先生上手いなあ(昨日も言った)。

 笑って感動できてキャラ萌え要素もあって、とにかくいろんな要素がふんだんに盛り込まれているんですよね。でもそれぞれが上手い具合にバランスを取り合っているのでうるさくならないこの辺りで作者の技量がいい意味ではかれるのではないかと。

 楽しかった。次巻があるなら読んでみたいです。なろうで続きもあるみたいで一応ブックマークしてはいますが、できるならお金を払って読みたいので。

 

 

以下ネタバレありなので注意

 

 

 全肯定奴隷少女とは、1000リンを払うことで10分間どんなお悩みも全肯定して慰めてくれる少女のこと。冷静に考えると割とヤバい存在ですが、ハスキーな声を高く大きく張り上げて、勢いに任せて日々の悩みに共感・応援・励ましの言葉をかけてくれる彼女の様子には、日々のストレスがスカッと吹き飛んでいってしまうと癒されるお客さんも多いようです。また、ガラの悪い人相手には看板を裏返して全否定奴隷少女としてドスをきかせて立ちはだかるのも面白かった。

 都会に憧れ田舎から飛び出してきたひよっこ冒険者レンは、右も左も分からずミスをしてばかり。自分と同い年ぐらいなのに自分より才能もあってパーティーの要にもなっている女魔術師の存在もあって、自分がいかに無力な存在だったかを思い知らされる日々を送っていました。そんなある日、レンはシスターのファーンが奴隷少女のお世話になっているところを目撃するわけです。

 ファーンが悩みをぶちまけスッキリしているところを目撃したレンですが、ここではまだ奴隷少女ちゃんのお世話にはならないんですね。

 

 彼がお世話になるのは、もっと先。

 

 彼が未熟なせいで、パーティーを危険に晒してしまい、女魔術師に怪我を負わせてしまった

 そのことでどん底まで突き落とされたレンは、いろいろなお客を見てきて、ここでようやく奴隷少女ちゃんのお世話になるわけです。

 

 ぼそぼそと話し出すレン。

 彼の言葉に合わせ、奴隷少女ちゃんはいつも通りのの言葉をかけ続けます。  しかし、その言葉はレンには響きませんでした。

 奴隷少女ちゃんの全肯定は癒されこそしますが、中身はほぼないと言っても過言ではありません。自責の念があまりにも強すぎるレンには、からっぽの言葉を勢いに任せて連発する奴隷少女ちゃんの行動は響きませんでした。認められない、受け付けられない身体。それでも口からは言葉がひたすら零れます。

 そして、1番話したいことを話そうとした瞬間……、10分が経ち、全肯定が終了してしまいました。

 もう一度1000リンを渡そうとしたレンでしたが、そこで、自分が女魔術師に怪我まで負わせたことを正当化しようとして奴隷少女の元へ来たことに気づいてしまい、果てしない虚しさを覚えてしまい、完全に壊れかけてしまいます。

 そんなとき。

 

「……あのね」

 

 掠れたハスキーな声。見上げると、なぜか全肯定奴隷少女が、10分はとっくに過ぎているにも関わらず、看板を置き、レンに声をかけたのです。

 普段のハイテンションはどこへやら、ぽつりぽつりと、どう言ったらいいか手探りしながら言っているように、普通の人のように言葉をかけるんです。このときの奴隷少女ちゃんの言葉が沁みるんですよ……人の核心をついてくるんですよ……響きすぎる……。

 なんと言ったかは自分の目で是非確認してほしいので敢えてここでは言いません。本を買うか、小説家になろうで無料でも読めます。

 ただひとつ言えるのは、感動したということです。

 佐藤先生しゅごいよぉ……。 嘘つき戦姫も読まなきゃ……。

 

 そして、スッキリしたところで、ファーンさんから女魔術師が回復したという知らせを受けます。 こういう顧客同士の繋がりいいなあ。

 そして女魔術師に逢いに行くレン。

 かーらーのー! ツンデレ女魔術師キタ━(゚∀゚)━!  可愛い! 可愛いよー!  ミュリナちゃんね。覚えた。

 可愛くて気高いツンデレ女魔術師……いい……。  こんな可愛い子を(無自覚に)誑かすレンくんよ。お前ちょっと鈍感過ぎんだろォ?!! なあ奴隷少女!! おまえもそうおもうだろ?!

 

「全くもってその通りなのよ!!!!!」

 

 この先は読者さんによるとどうやらラブコメ地帯になっているらしく、いやあ早く続きが読みたい!  続刊を待ち続けようと思います! 読んでいて本当に楽しかった!

処刑少女の生きる道(バージンロード)─そして、彼女は甦る─

文:佐藤真登 イラスト:ニリツ

刊行レーベル:GA文庫

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「メノウちゃーん。行こ!」
「……はいはい。わかったわよ」

 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』以来実に7年ぶりのGA大賞『大賞』受賞作。

 過去に異世界の日本からやってきた『迷い人』が世界規模の人災を引き起こし、処刑対象となった世界。『処刑人』の少女・メノウはある日、迷い人の少女・アカリと出会う。この世界に来る際に手に入れた力『時の純粋概念』の力が自動的に使われているのか、どれだけ殺しても殺しても殺される前の状態に戻ってしまう、不死身状態のアカリ。メノウはアカリを殺す方法を見つけるため、彼女を言いくるめともに旅立つのだが、なぜか懐いてくるアカリを前にして、少しずつ、だが確実に心が揺らぎ始める。
 これは、彼女が彼女を殺すその日までの物語

 ダンまち以来7年ぶりの大賞受賞作、発売前即重版、発売前からそんなアメリカンサイズな称号がどんどん追加されていき、ハードル爆上がりの状態で読んだのですが、とても面白かったです。良い百合だ……。
 異世界転生のアンチテーゼとも言える今作。アンチテーゼって下手な人が書くとめちゃくちゃ陳腐になるんですが、今作はその辺上手いなあと思いました。
 全肯定奴隷少女読んだときも思ったんですが、佐藤先生、取り扱うのが難しい題材でも普通に面白くしちゃうので困る(困らない)。
 1巻は壮大な序章といった感じでしたので(それでも充分面白かったですけどね!)、今週発売の2巻に期待がかかる作品です。

 

以下ネタバレありなので注意

 

 いやあ内容に関する前情報全くなしで読み始めたので、最初は「ちょっと設定が凝ってるだけの異世界転生ものなのかな……?」とちょっと目をシパシパさせながら読んでいたんですが、全く違いましたね……。
 まさか頭に思いっきりナイフぶっ刺してるシーンの挿絵ぶっ込んでくるとは思わないでしょ……。絵力もあって衝撃がすごかったです。
 迷い人は見つけ次第処刑されるわけですが、彼らの行いが特別悪かったわけではないんですよね。召喚対象に選ばれたのは全くの偶然、神様の気まぐれ。本人はただ普通に人間生活を送りたかっただけなのに、突然異世界に純粋概念なんて変な力くっつけられて召喚され、純粋概念に性格引きずられて我を忘れて暴走し、大勢の人から恨まれて挙句の果てに処刑される。やりきれないですよね……。後味悪い。
 メノウも思うところがあるのでしょう。日本の学校で自分が殺した迷い人と学校生活を送る夢を見るとのことですが、ここのところストレスフリーな作品ばかり読んでいたので、なかなかにこの導入がキツかったですねー。まあそこ超えたら明るいシーンも増えてはくるんだけど。

 癒し要員がモモとアカリでふたりいてよかった。これでひたすらに重いだけだときっと挫折してた。

 でもそのアカリも裏ありそうなんだよなあ……。というか絶対あるよねコレ。
 ちょっと天然な普通の癒し要員かと思ってたら後半でガラッと印象変わりましたね。メノウが自分を丸め込んでぶち殺そうとしていることにも、自分の純粋概念でそれを阻止できることにも全て気づいている。でもメノウちゃんになら殺されてもいいと彼女について行く。紛うことなきヤンデレですよね……。メノウのためなら汽車ポッポの中で服まで脱ぎ出すし……。
 アカリがそこまでメノウに入れ込む理由づけが若干弱いように感じないこともないですが、こういうぶっ飛んだキャラ自体は好きです。いいぞもっとやれ。

 個人的にメインキャラの中で好きなのはモモ
 本作の貴重な癒し要員、そして百合要員です。
 ツインテ、お姉様大好きの百合要員ということで、ちょっと最初は『とある』の白井黒子を連想しましたが、読み進めていくうちに彼女特有の魅力もちゃんと見えてきたのでよかったです。
 最初はメノウのこと変なやつだと思ってた、ってのいいよねー。そっから変遷していくタイプ好きよ?
 1番作品を読み進めていくごとに印象が変わっていったキャラクターだと思いますね。メノウはもちろんアーシュナとの絡みもよかったですし、2巻はこの娘(+アーシュナ)の動向にも注目していきたいところ。
 嫌な予感を肌で感じとっているみたいですしね……。

 今回はひとり目の迷い人の処刑、アカリとの出会い、汽車でのテロ事件、そして最後に最初の一歩を踏み出して終わり、と、前述の通り本当に『壮大な序章』といった感じの構成でした。明らかに長期シリーズ化を想定して書かれてますよね? これ。
 なので1巻だけで評価を決めてしまうのはどうなのかなーとも思いましたが、決めてしまうなら個人的にはとても面白かったです。まだまだ引っかかるところもありますが、アンチテーゼの書き方に関しては既に100点満点と言ってもいいかもしれません。
 今週発売の2巻も楽しみに待とうと思います。

 ──テレビアニメ『終末何してますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』挿入歌『スカボロー・フェア』を聴きながら。

はじめに

初めてましての方は初めまして。
初めましてじゃない方はこんばんちは。
スズナリンゴと申します。

 

とあるブロガーさんの後押しもあり思い切ってライトノベルやマンガの感想ブログを開設してみました。余程のことがない限り、週に2,3回のペースで記事を上げていく予定ですので、お暇なときにでも読んでくださったらと思います。

 

二次元作品は何かと偏見を持たれがちですが、そうやって避けられて埋もれていくのはもったいないぐらい面白い作品もたくさんあります。


そんな作品を少しでも多くの方にご紹介できたらいいなあ、と思っております。
これからよろしくお願いいたしますm(_ _)m

 

──テレビアニメ『終末何してますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』挿入歌『Always in my heart』を聴きながら